
行政書士試験には、民法という科目分野があります。
予備校や通信講座を利用する方は、各カリキュラムに沿って学習を進めていけば問題ありませんが、独学で行政書士を目指す方にとっては、使用する教材や勉強の進め方、スケジュール管理に悩むことも多いかもしれません。
僕は、2020年の行政書士試験に独学で挑戦し、結果は216点でした。
そのうち民法では、9問中9問(36点)正答することができました。
民法は、理解に時間がかかり、苦手意識を持つ受験生も多い科目です。
しかし、独学でも正しい手順を踏み、毎日継続して勉強を続けることができれば、必ず得意分野にすることができます。
この記事では、独学で行政書士試験に挑戦する方のために、民法の具体的な勉強の進め方を詳しくまとめています。
🎯 配点は全体の25%
まずは、民法の配点について確認しておきましょう。
民法の配点は、択一問題が9問(36点)、記述問題が2問(40点)の合計76点です(300点満点中)。
全体の約25%を占めることになり、行政法に次いで合格を左右する非常に重要な科目分野です。


民法は、単なる暗記だけではなく、理解が問われる科目です。
毎日コツコツと時間をかけて学習を進め、少しずつ理解を深めていく忍耐力が求められます。
行政書士試験の中では、最も克服に時間がかかる科目分野と言っていいでしょう。
いったん勉強をスタートしたら、試験日まで毎日民法に触れることを習慣化してください。
毎日の積み重ねと復習の反復が、本試験で得点を取るための近道になります。
📊 過去問だけで正答できる問題数は1.7問
どんな資格試験でも、まずは過去問を克服することが基本です。
民法において、過去問を完璧に仕上げた場合、本試験でどのくらい得点できる可能性があるのでしょうか。
民法の5肢択一問題では、過去問だけで正答できる問題数は1.7問というデータがあります。
📅 年度 | 📚 正答数(9問中) |
---|---|
2015年度(平成27年) | 0問 |
2016年度(平成28年) | 3問 |
2017年度(平成29年) | 2問 |
2018年度(平成30年) | 2問 |
2019年度(令和元年) | 1問 |
2020年度(令和2年) | 2問 |
このデータからもわかるように、民法は過去問だけでは得点を伸ばすことが難しい科目です。
5肢択一なので、適当に解答しても9問中約1.8問は確率的に正解できるので、過去問を完璧に仕上げたとしても、得点率はほとんど変わらないことになります。
もちろん、記述問題も過去問と同じ問題は出題されません。
まずは、テキストや問題集をしっかりとこなし、過去問を完璧に解ける状態に仕上げることが大前提です。
そのうえで、改正民法や未出の論点・判例にも徐々に学習範囲を広げていく必要があります。

📚 おすすめの教材と進め方
民法で得点を取るためには、しっかりとした教材選びと、段階を踏んだ勉強方法が必要です。
民法は、大きく5肢択一対策と記述対策に分かれます。
まずは夏前までに5肢択一対策を完了させ、夏以降は記述対策に力を入れていきましょう!

- 📚 必要な教材
- 📘 よくわかる民法
- 📗 スーパー過去問ゼミ 民法Ⅰ・Ⅱ
- 📙 合格革命 肢別過去問集
- 📝 ウォーク問 過去問題集
- 🖋️ 出るとこ千問ノック
- ✍️ 記述問題集(40字記述対策)
- 🧪 模試
- 📅 他資格試験(宅建・司法書士・予備試験など)
- 📖 六法
📘 7月末までは5肢択一対策を。過去問の論点をしっかり理解できる状態に!
テキストは、自分に合ったものを選びましょう。
行政書士専用のオールインワンの合格テキスト(すべての科目分野が1冊になったテキスト)を使用しても、民法の専門書を使用してもいいです。
オールインワンのテキストは、過去に出題された問題を中心に編成されています。
民法は過去問からの出題頻度はかなり低く、オールインワンのテキストは行政書士以外の試験への対応も難しいです。
今後司法書士などへのステップアップを考えている場合は、最初から民法専門書を選ぶのがおすすめです。
おすすめテキストは「よくわかる民法」です。
この1冊で基礎から応用まで対応でき、独学でもスムーズに理解を進められるように工夫されています。

問題集は、過去問とその他の問題集に分かれます。
過去問は数に限りがあるので、急いでする必要はありません。
まずは、民法の基本をしっかりと学ぶことに重点を置くことが大切です。
僕がテキスト後におすすめしたい問題集は、公務員試験用の「新スーパー過去問ゼミ」です。
ポイントや解説がとてもわかりやすく、公務員試験の過去問を通じて民法の理解をより深めることができます。
「よくわかる民法」と「新スーパー過去問ゼミ」の2冊で、行政書士試験の市販模試や公開模試などの初見の問題にはかなり対応できるようになります。

試験直前に実感することができます!
過去問には、一問一答、分野別、年度別の種類があります。
3つの過去問の中で一番重要なのは一問一答です。
一問一答が解けるようになると分野別や年度別は必ず解けるようになるからです。
過去問は一問一答から始めましょう。
僕がおすすめしたい一問一答の過去問は、合格革命の「肢別過去問集」です。
「肢別過去問集」には、昨年までの本試験の問題が掲載されています。
とても基礎的な内容になっているので、日々の勉強のベースにし、試験直前まで反復して使用するのがいいでしょう。
「肢別過去問集」に出てくる条文や判例は、すべて確実に答えられるようにしておきましょう。
それくらい行政書士試験において基礎的な問題集です。

行政書士試験ではとても有名な問題集です!
分野別の過去問は、「出る順行政書士 ウォーク問 」を使用しましょう。
「ウォーク問」には過去10年分のすべての問題が分野別に収録され、「肢別過去問集」に掲載されていない問題も掲載されています。
「肢別過去問集」をしっかりと解くことができていれば、8〜9割は正答することができます。
「ウォーク問」では5肢択一問題(消去法での答えの導き方)や行政書士試験独特の言い回しに慣れることを念頭に置いて、要所要所で解き直すようにしましょう。
民法はとても多面的な構造になっていて、同じ条文でも資格試験によって傾向や問われ方が異なります。
行政書士試験には行政書士試験の特徴があるので、過去問題で本試験の問われ方や難易度に慣れておく必要があります。
10年分の過去問に出てくるすべての問題の論点や判例は完璧に抑えておきましょう。

10年分の過去問題を完璧に仕上げること、それが最初の目標です!
ここまでの過程をしっかりとこなしていれば、本試験で9問中5問は正答できる力が付いているはずです。
この時点で一度、「よくわかる民法」に戻ってみてもいいでしょう。
忘れていたり、気付けなかった新しい発見がたくさんあると思います。
📝 8月からは記述対策を!模試で初見の問題にたくさん触れ、改正民法も重点的に!
民法は、記述問題対策も必要になります。
記述の勉強は択一問題の、択一の勉強は記述問題のベースアップに繋がります。
記述の問題集は、「みんなが欲しかった! 行政書士の40字記述式問題集」がおすすめです。
この問題集は、記述問題の書き方・考え方が詳しく解説されており、記述初心者でも取り組みやすい内容になっています。
ただし、問題の質にばらつきがあるため、他の市販模試や公開模試も活用しながら、できるだけ多くの記述問題に触れることが大切です。

記述問題は、どれだけたくさん問題に触れても、同じ問題が出る可能性は低いです。
択一問題を解くときに、解説の条文や判例の言い回しなどにしっかりと目を通して、40字程度にまとめることを意識する癖を付けておきましょう。
2020年以降に関しては、改正民法の条文にとくに留意して、判例を含めしっかり条文暗記と理解しておくようにしましょう。
記述問題のうち1問は満点を、もう1問は部分点を取ることを目標にしましょう。
8月以降は、模試や予想問題集を使って初見問題への対応力を鍛えていきましょう!
模試の活用目的は、次の3つです。
- 🌀 初見問題の対応力を身につける
- 📝 自分に合った本番の解答順番を決める
- 🔎 苦手分野を発見して対策する
模試は、市販模試でも公開模試でも構いません。
できれば複数回受験して、いろいろな問題傾向に慣れておくと、本試験での応用力がぐんと高まります。
模試で間違えた問題はしっかりと見直しをして、苦手分野と改正民法部分を中心に勉強を進めましょう。
本番では初見の問題と対峙することになります。
初見の問題をたくさんこなして対応力を身に付けておきましょう。
時間に余裕があれば、合格革命シリーズの「一問一答式 出るとこ千問ノック」もおすすめです。
「千問ノック」は、過去問ではない一問一答の予想問題集です。
少し変わった問題や重箱の隅を突いたような細かい問題もあるので、優先順位は低めです。
9月以降は、本試験に向けた仕上げに入ります。
この時期に重点を置くべきポイントは、次の3つです。
- 📝 改正民法(2020年施行部分)の徹底理解
- 📚 年度別過去問(直近3年分)の総仕上げ
- 📖 試験特有の言い回しに慣れる
まずは、2020年に施行された改正民法の範囲を重点的に確認しましょう。
改正民法は、債権法を中心に大きな変更があり、択一問題・記述問題の両方で狙われやすいポイントです。
どの条文が改正され、追加されたのかを把握しておくこと、いわゆる見出し学習が有効です。
市販模試や公開模試、過去問、テキスト・問題集の改正部分を抜き出して、優先的に復習してください。
2020年以降に択一問題や記述問題で問われた改正部分は優先度を下げてもいいでしょう。
また、行政書士試験より前に実施された予備試験や司法書士試験、宅建試験の問題解いておくことも最新の出題傾向を探るには有効です。

どの試験もウェブで簡単に手に入れることができます!
試験直前(1週間くらい前から)には、年度別過去問を最新から3年分ほど解答しておきましょう。
目的は、模試の言い回しから本試験独特の言い回しに目を慣らしておくことです。
年度別過去問は「肢別過去問集」「ウォーク問」で既に解いた問題も多いはずなので、復習のつもりでサクサク確認しましょう。
年度別過去問は、「肢別過去問」や「ウォーク問」で解答した問題ばかりなので、ほぼ正解できるはずです。
市販模試には付録で直前年度分の本試験問題が収録されているものもあり、行政書士試験研究センターのホームページからも過去問をダウンロードすることができます。
行政書士試験研究センターの過去問は、著作権の関係で割愛されている問題があり、解説もないので、別途市販の年度別過去問を購入してもいいと思います。

新しい論点を追い求めてもキリがありません。まずは過去問、そして周辺知識です!
🏁 まとめ
行政書士試験の勉強方法はさまざまで、挑戦した人の数だけの勉強方法があります。
勉強方法に正解や不正解はありませんが、唯一言えることは合格者の勉強方法は正しいということです。
合格者が実践していた勉強法で、自分に合っていると感じたものは、できるだけ取り入れて試してみましょう。
民法は、最も理解に時間のかかる科目分野です。
一度勉強を始めたら、試験日まで毎日触れるようにしましょう。
- 🌀 7月末までは5肢択一対策、過去問を完璧に理解できるように!
- 🔁 過去問は「一問一答 ➔ 分野別 ➔ 年度別」の順番で取り組む!
- 📝 8月からは記述対策、模試で初見問題にたくさん触れる!
- 📖 試験直前期は改正民法部分を重点的に復習!
独学でも、正しい手順を踏んで勉強を継続できれば、必ず苦手意識はなくなります。
毎日の積み重ねが、必ず合格へと導いてくれます。
