
行政書士試験には、基礎法学・憲法という科目分野があります。
予備校や通信講座を利用する方は、各カリキュラムに沿って学習を進めていけば問題ありませんが、独学で行政書士を目指す方にとっては、使用する教材や勉強の進め方、スケジュール管理に悩むことも多いかもしれません。
僕は2020年の行政書士試験に独学で挑戦し、結果は216点でした。
そのうち基礎法学と憲法では、7問中3問(基礎法学0点・憲法12点)正答することができました。
基礎法学・憲法は、得点しづらい科目分野の一つです。
問題ごとの難易度にばらつきが大きく、安定して得点するのが難しいため、苦手意識を持つ受験生も少なくありません。
難しい問題は無理に解こうとせず、テキストや過去問に出てくる条文暗記や判例理解といった基本に絞った学習をしっかり積み重ねることが、最善の戦略になります。
この記事では、独学で行政書士試験に挑戦する方のために、基礎法学・憲法の具体的な勉強の進め方を詳しくまとめています。
🎯 配点は全体の12%
まずは、基礎法学・憲法の配点について確認しておきましょう。
基礎法学は択一問題2問(8点)、憲法は択一問題5問(20点)と多肢選択問題1問(8点)が出題されます。
合計36点、行政書士試験全体(300点満点)のうち約12%を占めています。
割合としては高くはありませんが、試験問題の1問目から7問目で出題され、さらに憲法には多肢選択問題も含まれるため、重要な科目分野です。


基礎法学・憲法の学習では、基本的には暗記が中心になります。
憲法の統治分野(国会・内閣・司法)については条文暗記、人権分野については条文暗記と判例理解が求められます。
また、基礎法学は範囲が非常に広く、出題範囲も明確でないため、初学者にとっては対策が難しい科目です。
憲法については条文と判例を中心に、基礎法学については過去問でよく問われる論点を中心に学習を進めるのが効率的です。
行政法や商法・会社法、一般知識(個人情報保護法や行政書士法など)といった暗記系の科目が後半に控えているため、できるだけ早い段階で基礎法学・憲法の基本知識を身に付けておくことが重要です。
毎日少しずつでも六法を読み進め、条文や判例の理解を深めておきましょう。
日々の積み重ねと復習が、本試験で得点を取るための一番の近道になります。
📊 過去問だけで正答できる問題数は1.8問
どんな資格試験でも、まずは過去問を克服することが基本です。
基礎法学・憲法において、過去問を完璧に仕上げた場合、実際に本試験でどのくらい得点できる可能性があるのでしょうか。
データによると、基礎法学・憲法の択一問題では、過去問だけで正答できる問題数は7問中1.8問というデータがあります。
📅 年度 | 📚 基礎法学 | 📖 憲法 | 🎯 合計 |
---|---|---|---|
2015年度(平成27年) | 0/2 | 2/5 | 2/7 |
2016年度(平成28年) | 0/2 | 1/5 | 1/7 |
2017年度(平成29年) | 1/2 | 2/5 | 3/7 |
2018年度(平成30年) | 1/2 | 1/5 | 2/7 |
2019年度(令和元年) | 0/2 | 2/5 | 2/7 |
2020年度(令和2年) | 1/2 | 0/5 | 1/7 |
このデータからもわかるように、基礎法学・憲法は過去問だけでは十分に得点できない科目です。
5肢択一問題なので、適当に解答しても確率的には7問中1.4問程度は正解できる計算になります。
つまり、過去問を完璧に仕上げても、過去問だけではなかなか得点を伸ばすことはできません。
基礎法学・憲法では、どうしても解けない難問が毎年出題されます。
テキストや問題集をしっかりとこなし、まずは過去問を完璧に解ける状態に仕上げることが大前提です。
そのうえで、条文暗記やまだ出題されていない判例・論点にも徐々に学習範囲を広げていく必要があります。

📚 おすすめの教材と進め方
基礎法学・憲法で得点を狙うために、必要な教材と進め方について解説します。
まず取り組むべきは憲法です。
憲法には、5肢択一問題と多肢選択問題が出題されますが、基本は5肢択一対策を中心に進めましょう。
多肢選択問題は、5肢択一対策をしっかり進めていれば特別な対策は不要です。

- 📚 必要な教材
- 📘 よくわかる憲法
- 📗 合格革命 肢別過去問集
- 📙 ウォーク問 過去問題集
- 📝 出るとこ千問ノック
- 🖋️ 記述問題集(多肢選択)
- 🧪 模試
- 📅 年度別過去問
- 📖 六法
📚 7月末までは5肢択一対策を。過去問を完璧に理解できる状態に!
テキストは自分に合ったものを選びましょう。
行政書士用オールインワンテキストでも、憲法の専門書でも構いません。
オールインワンテキストは、過去問に基づいた問題が中心にまとめられています。
基礎法学・憲法は過去問からの出題率が低いため、オールインワンだけでは不十分になる可能性もあります。
司法書士など、さらなる資格取得を視野に入れている方は、最初から専門書を選ぶのもおすすめです。
おすすめテキストは「よくわかる憲法」です。
この1冊で基礎法学にも対応でき、他の資格試験にも役立つ内容になっています。
設例のクセは多少ありますが、わかりやすく、独学でもスムーズに理解できるテキストです。
勉強を始めたら、まずはテキストを通読して、全体像をつかみましょう。

基礎法学に関しては、初学者にとってかなり難易度が高いです。
範囲も広く、難問も多いため、テキストや過去問と同じ論点を確実に得点できるようにしておくことが大切です。
過去問では「伊藤真の法学入門」に掲載されていることがよく出題されているので、日頃の読書代わりに一読しておいてもいいと思います。
問題集は、テキスト終了後すぐに過去問に入ってOKです。
民法や行政法に比べて配点が低いので、過剰な時間をかけすぎないようにしましょう。
過去問には、一問一答、分野別、年度別の種類があります。
この中で一番重要なのは一問一答です。
一問一答ができれば分野別・年度別も自然に解けるようになるからです。
僕がおすすめしたい一問一答の過去問は、合格革命の「肢別過去問集」です。
「肢別過去問集」には、昨年までの本試験の問題が掲載されています。
とても基礎的な内容になっているので、日々の勉強のベースにし、試験直前まで反復して使用するのがいいでしょう。
基礎法学・憲法の問題数は少ないので、比較的短時間で解答し終えることができるはずです。
「肢別過去問集」に出てくる条文や判例は、すべて完璧に答えられるようにしておきしましょう。

行政書士試験ではとても有名な問題集です!
分野別の過去問は、「出る順行政書士 ウォーク問 」を使用しましょう。
「ウォーク問」には過去10年分のすべての問題が分野別に収録され、「肢別過去問集」に掲載されていない問題も掲載されています。
「肢別過去問集」をしっかりと解答できていれば、7〜8割は正答することができるはずです。
ウォーク問では、5肢択一問題(消去法での答えの導き方)や行政書士試験独特の言い回しに慣れることを念頭に置いて、要所要所で解き直すようにしましょう。
10年分の過去問に出てくるすべての問題の論点や判例は確実に抑えておきましょう。

ここまで学習を進めれば、本試験で7問中3問は十分に得点できる力が付いているはずです。
この時点で一度、「よくわかる憲法」に戻ってみてもいいでしょう。
忘れていた内容や、新たな発見がきっとあるでしょう。
📝 8月からは模試で初見の問題に慣れ、多肢選択問題にもたくさん触れる!
憲法では、多肢選択問題も出題されます。
多肢選択問題は、最初のうちは難しく感じるかもしれませんが、しっかりと基礎力をつけていれば比較的得点しやすい問題です。
多肢選択問題の対策はとくにする必要はありません。
条文学習と判例学習をしていれば必ず得点源にできますので、日頃から択一問題の論点をしっかりと掴む癖を付けておきましょう。
多肢選択問題では、4問中3問の正答を目指しましょう。
多肢選択の問題は、民法や行政法で使用する記述問題集にも掲載されていますので、有効に活用してください。
さらに、市販模試や公開模試などでできるだけたくさんの多肢選択問題に触れておきましょう。

多肢選択問題は、特別な対策をする必要はありません!
ここからは、市販模試や公開模試などで実践レベルで応用力を上げていくことになります。
8月以降は、模試や予想問題集を使って初見問題への対応力を鍛えていきましょう!
模試の活用目的は、次の3つです。
- 🌀 初見問題の対応力を身につける
- 📝 自分に合った本番の解答順番を決める
- 🔎 苦手分野を発見して対策する
模試は、市販模試でも公開模試でも構いません。
模試で間違えた問題はしっかりと見直しをして、苦手分野や初見の判例問題などの理解を中心に勉強を進めましょう。
暗記が不十分な条文にもしっかり目を通しておきましょう。
模試の復習が実力アップに一番効果的です。
本番では初見の問題と対峙することになります。
初見の問題をたくさんこなして対応力を身に付けておきましょう。
時間に余裕があれば、合格革命シリーズの「一問一答式 出るとこ千問ノック」もおすすめです。
「千問ノック」は、過去問ではない一問一答の予想問題集です。
少し変わった問題や重箱の隅を突いたような細かい問題もあるので、優先順位は低めです。
試験直前(1週間くらい前から)には、年度別過去問を最新から3年分ほど解答しておきましょう。
目的は、模試の言い回しから本試験独特の言い回しに目を慣らしておくことです。
年度別過去問は「肢別過去問集」「ウォーク問」で既に解いた問題も多いはずなので、復習のつもりでサクサク確認しましょう。
年度別過去問は、「肢別過去問」や「ウォーク問」で解答した問題ばかりなので、ほぼ正解できるはずです。
市販模試には付録で直前年度分の本試験問題が収録されているものもあり、行政書士試験研究センターのホームページからも過去問をダウンロードすることができます。
行政書士試験研究センターの過去問は、著作権の関係で割愛されている問題があり、解説もないので、別途市販の年度別過去問を購入してもいいと思います。

🏁 まとめ
行政書士試験の勉強方法はさまざまで、挑戦した人の数だけの勉強方法があります。
勉強方法に正解や不正解はありませんが、唯一言えることは合格者の勉強方法は正しいということです。
合格者が実践していた勉強法で、自分に合っていると感じたものは、できるだけ取り入れて試してみましょう。
基礎法学・憲法は、難問が多く、点数が安定しづらい科目分野です。
難易度の高い問題はあまり深追いせずに、過去問や模試などで触れた問題の条文暗記や判例理解から徐々に範囲を広げて勉強を進めていくようにしましょう。
- 🌀 7月末までは択一問題対策、過去問を完璧に理解できるように!
- 🔁 過去問は「一問一答 ➔ 分野別 ➔ 年度別」の順番で取り組む!
- 📝 8月以降は模試を中心に、初見問題・多肢選択問題にたくさん触れる!
独学でも、正しい手順を踏んで勉強を継続できれば、必ず苦手意識はなくなります。
毎日の積み重ねが、必ず合格へと導いてくれます。
