
色彩検定のUC級は、2018年冬期から新設された検定です。
色彩検定のUC級では、色のユニバーサルデザインの基本を学ぶことができます。
色彩検定のUC級は、色彩検定の中でも難易度が低い試験ですので、ポイントを押さえれば、比較的簡単に合格できます。
「色彩検定UC級 レッスン」では公式テキストに沿って、検定に合格するためのポイントを解説していきます。
では、色彩検定UC級の第4章「色覚異常による色の見え方」を学習していきましょう。

📚 公式テキスト
📖 目次
🧬 第4章 色覚異常による色の見え方
👁️ 色覚の多様性
色の見え方は人それぞれです。それを色覚特性と言います。

色覚特性には、遺伝などの先天性、ケガや病気などの後天性、加齢などの原因があります。
🧬 1. 先天性の色覚異常
先天性の色覚異常とは、生まれつき錐体細胞に異常がある場合です。いわゆる遺伝です。
眼の網膜にある錐体には、短波長の光を感じるS錐体、中波長の光を感じるM錐体、長波長の光を感じるL錐体があります。遺伝によって、そのうちのどれかが欠損していたり、感度が低い状態だったりする場合があります。
これを先天性の色覚異常といいます。先天性な色覚異常は、生まれてからずっと変化することはありません。

🧬 2. 後天性の色覚異常
後天性の色覚異常とは、病気やケガ、心因性によって異常が起こる場合です。
眼や脳の病気、頭のケガ、ストレスなどが原因で起こります。

🧬 3. 加齢による色覚異常
加齢による色覚異常は、老化現象によって起こります。
歳をとるにつれ、水晶体は少しずつ黄色くなり、高齢になると茶褐色にまで濁ってしまいます。これを水晶体の黄変といいます。
黄色くなった水晶体は、短波長の青い光を多く吸収するので、高齢者は青系の色が見えづらくなります。また、水晶体が白濁した状態を白内障と呼びます。

🧬 4. ロービジョン
ロービジョンとは、病気やケガなどで視力低下や視野欠損が起こる場合です。
メガネやコンタクトレンズなどの矯正器具を使ってもよく見えなかったり、視野の一部が欠けていたりする状態をロービジョンといいます。
ロービジョンの原因には、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、黄斑変性症などがあります。

国内に100万人ほどいるそうです!
📊 色覚異常の割合
色覚異常の人は、違う色に見えるはずの色の組み合わせが、同じ色や似た色に見えて区別しづらくなります。
色覚異常の人の割合は、日本人男性の5%(20人に1人)、女性の0.5%程度です。
黒人男性は4%、白人男性は6〜8%ほどです。

🔍 色覚異常のタイプ
色覚異常は、眼の網膜にある3種類の錐体(S錐体、M錐体、L錐体)のうち、どれか一つ以上に欠損や機能異常があるために起こります。
色覚異常の特性のタイプは以下の3つに分類されます。
3色覚
3つの錐体が正常に機能している色覚特性。日本人男性の95%です。
2色覚
3つの錐体のうち1つに異常がある色覚特性です。
🔴 1型色覚(P型)
長波長に感度の高いL錐体の異常によって起こります。L錐体を持たない1型2色覚と、感度が低い1型3色覚があります。
日本人男性の1.5%です。
🟢 2型色覚(D型)
中波長に感度の高いM錐体の異常によって起こります。M錐体を持たない2型2色覚と、感度が低い2型3色覚があります。
日本人男性の3.5%です。
🔵 3型色覚(T型)
短波長に感度の高いS錐体の異常によって起こります。S錐体を持たない3型2色覚と、感度が低い3型3色覚があります。
日本人男性の0.001%です。

1色覚
1つの錐体しか働かない、または杆体しか持たない色覚特性。明るさは認識できますが、色を区別することはできません。
日本人男性の0.001%です。

🧐 色覚異常の見え
🔴 1型色覚と2型色覚
色覚異常の中でも、1型色覚と2型色覚は、赤系統と緑系統の区別がつきにくいという共通点があります。
赤と緑が同じ色に見えるということは、色相環で赤と緑との距離が近づいて見えるということなので、色相環を縦の楕円形と考えるとわかりやすいです。

つまり、赤と緑、橙と黄緑、青と紫などの距離も近くなるので、同じ色に見えます。色相環の中心は無彩色なので、ピンクや水色などの薄い色は白や灰色に見えます。
1型色覚と2型色覚の違いは、長波長の赤い光を感じるL錐体を持たない1型色覚は赤が暗く見えて黒との区別がつきにくくなり、2型色覚にはそれがないことです。

🔵 3型色覚
3型色覚は、黄色と青紫や青と緑、青と黒などの区別がつきにくくなります。
3型色覚は後天的な原因で起こることが多く、日常生活の不便があまりないとされています。
🖍️ タイプ別の混同しやすい色(混同色線)
色覚特性のタイプによって区別しづらい色の組み合わせは、色度図を使えばわかりやすいです。
色度図とは、XYZ表色系における色座標を表示したものです。
x座標とy座標はともに色相と彩度を表し、スペクトルは色度図上で馬の蹄の形をした曲線で表示されます。色度図の中央には無彩色が位置していて、外周に向かうほど鮮やかな色が並びます。

色度図上で、1型色覚や2型色覚で区別のしづらい色を結ぶと下図のようになります。

この赤い直線を混同色線といい、混同色線上の色をたどって、どのような色の組み合わせが区別しづらいかの検討をつけることができます。

🧪 色覚検査法
色覚異常の検査方法には、以下の3つがあります。
色覚検査表
同じ色系統の点の中に数字などを紛らわせたモザイク状の検査図版です。
世界中でもっとも一般的に使用されている石原色覚検査表、石原色覚検査表と同じ原理で色相配列検査のパネルD-15テストで使用されている色を使って作られた標準色覚検査表があります。
石原色覚検査表 出典:DICカラーデザイン株式会社
標準色覚検査表 出典:参天製薬株式会社
色相配列検査
検査用に用意された色コマを似た色の順に並べさせる検査方法(パネルD-15テスト)です。
パネルD-15テスト 出典:参天製薬株式会社
アノマロスコープ検査
アノマロスコープという機器を使って、先天性の赤緑色覚異常の特性を調べる検査です。
アノマロスコープ 出典:株式会社ナイツ

🧬 色覚異常と遺伝
先天性の色覚異常は、性染色体にある遺伝子の特性によって起こります。
ヒトの遺伝子は46個あり、23対を成しています。
23対のうち22対は常染色体、残りの1対は性染色体といい、女性はXX、男性はXYの組み合わせです。
色覚異常の遺伝子はX染色体にあり、日本人の場合、X染色体に色覚異常の遺伝子を有する確率は5%です。
男性はXYなので、5%の確率で色覚異常が発現します。
女性はXXなので、片方だけなら色覚異常が発現せず保因者となり、両方に異常遺伝子がある場合のみ色覚異常が発現します。
そのため女性の発現率は0.25%です。

性染色体XXの両方に異常があると発現する遺伝を、伴性劣性遺伝といいます。
👩👩👧 遺伝パターン別の発現例
母親の性染色体をX¹X²、父親の性染色体をX³Yとすると、子どもの性染色体は次のどれか(X¹X³、X²X³、X¹Y、X²Y)になります。
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
1. 母親も父親も色覚異常の遺伝子を持たない場合
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
子ども全員に色覚異常の遺伝子は受け継がれません。
2. 母親は色覚異常の遺伝子を持たないが、父親が色覚異常の遺伝子を持つ場合
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
娘たちは保因者になりますが、色覚異常は発現しません。

女性は、片方だけなら色覚異常は発現しません!
3. 母親が色覚異常の遺伝子の保因者の場合
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
娘1が保因者・息子1に色覚異常が発現、もしくは娘2が保因者・息子2に色覚異常が発現します。

男性は、片方だけで色覚異常が発現します!
4. 母親が色覚異常の遺伝子の保因者、父親が色覚異常の遺伝子を持つ場合
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
娘1と息子1に色覚異常が発現・娘2が保因者、もしくは娘2と息子2に色覚異常が発現・娘1が保因者になります。

女性は、両方であれば色覚異常が発現します!
5. 母親が色覚異常の遺伝子を持つ場合
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
娘1と娘2が保因者、息子1と息子2に色覚異常が発現します。

男性は、片方だけで色覚異常が発現します!
6. 母親も父親も色覚異常の遺伝子を持つ場合
(X¹+X²)(X³+Y)=X¹X³(娘1)+X²X³(娘2)+X¹Y(息子1)+X²Y(息子2)
子ども全員に色覚異常が発現します。

📝 まとめ
「第4章 色覚異常による色の見え方」は、色覚特性の原因とタイプについて学習する章です。
色彩検定UC級は、色彩検定3級と合わせて勉強すると、もっと詳しく学ぶことができます。